薬剤師から看護師へ、そして大学教授へ!遠回りを恐れずに今必要だと思うことを積み重ねる【横浜市立大学・赤瀬智子教授】
横浜市立大学の教授として勤務をされている赤瀬智子教授に、現在の業務やこれまでのキャリア形成の過程に関して、インタビューさせていただきました。

・北里大学病院勤務 (1991年~1994年)
・昭和薬科大学薬学部,助教 (1994年〜2008年)
・東京大学大学院医学系研究科, 助教 (2008年〜2011年)
・東海大学大学院健康科学研究科, 准教授(2011年〜2012年)
・横浜市立大学大学院医学研究科, 教授(2012年〜現在)
目次
所属大学における業務内容・役職・役割を教えてください
私は横浜市立大学の医学部の副学部長および、看護学科長を務めています。
医学部の看護学科は、医学科と協力して質の高い教育・チーム医療・研究を推進することが役割です。看護学科長としては、学生教育や研究、そして地域貢献活動が活発化し発展するよう統括しています。横浜市立大学は横浜市とともに、地域貢献をすることも重要な使命です。
また、教育研究者としての本業は、大学院医学研究科の看護生命科学分野とクリティカルケア・周麻酔期看護学分野の教授です。人々の健康に関する課題を根本から追求し、基礎科学的なアプローチを用いて看護ケアや医療のケアを開発することをミッションとしています。
経歴に関して教えてください
私は薬学部を卒業し、薬剤師免許を取得しました。当時(30〜40年前)の薬剤師は、薬を調合する仕事が中心で、患者さんと直接関わる機会が限られていました。
そのような状況に違和感を抱き、より患者さんに近い立場で医療に関わりたいと思うようになり、看護師の道を選びました。
看護師免許を取得した後に、北里大学病院で臨床勤務を経験します。
その後、臨床現場の経験から医療の根本的な問題に興味を持ち、金沢大学で博士課程の薬学博士号を取り、研究の道へと進みました。
大学教員としてのスタートは、昭和薬科大学薬学部の助教です。その後、東京大学大学院医学研究科の看護学の助教、東海大学健康科学研究科の准教授として、それぞれ勤務しました。
そして、2012年から横浜市立大学大学院医学研究科の看護生命科学分野の教授に就任し、2016年にクリティカルケア・周麻酔期看護学分野も兼任しました。
現在までのキャリア形成の中で意識していたことを教えてください
若い頃は将来の道が見えにくいため、その時々で「重要だ」「必要だ」と思うことに対して進んでいくことが重要です。最初から教授になることを目指していたわけではなく、必要だと思うことを積み重ねた結果が今の位置づけになっています。
看護師として働いていたときは、多くのケアに科学的根拠(エビデンス)がないことに苦しみを感じました。調べても調べてもわからないことがあったとき「エビデンスがないなら自分で作ればいい」と発想を転換し、大学の教育研究者になることを決めました。
私の思いは「根本から理屈や理由を理解し、それを患者さんへのケアにつなげたい」というものです。その気持ちを持ち続けながら、基礎科学の道に戻り、金沢大学自然科学研究科生命科学専攻で博士課程を修了しました。
私が大切にしてきたのは「遠回りを恐れないこと」です。一見無駄に思える経験も、後になって必ず役立つと確信しています。
例えば、東京大学で皮膚の研究を始めたとき、過去に実施していた生活習慣病や婦人科疾患の研究が役立ちました。
また、子育てで研究が一時的に停滞した時期もありましたが、その経験が学生に指導する際に活きています。子育てを通して人間の成長を見守る経験が、学生を理解し、おおらかな目線で教育できることにつながっています。
今の若い世代は効率を求めがちですが、寄り道や失敗を通じてこそ、思考力が養われ、最終的には自分の目指す場所にたどり着けるのではないでしょうか?
これからの展望を教えてください
これまで生活習慣病から始まり、肥満の研究、そして皮膚という臓器に出会い、私のバックグラウンドにある薬の知識を活かして、患者さんにとって適切な薬の治療や管理方法を研究してきました。
今後は、特に手術を受ける患者さんや重症の患者さんに焦点を当てたいと考えています。手術後に痛みが残るケースや、認知症などで自分の痛みを適切に伝えられない患者さんがいます。
そのような方のために、痛みを客観的に可視化できる方法を開発することが次の研究ミッションです。患者さん自身が訴えられなくても、医療者が体の状態を見て判断できるような方法を作りたいと思っています。
また、個人的な課題として、英会話力を高めたいです。英語論文は書けますが、外国人との会話にはまだ苦手意識があります。
この壁を乗り越えて、世界中の医療者や研究者とコミュニケーションを取り、研究の視野をさらに広げていきたいです。そして最終的には、世界中の人々がより健康で幸せになれるような研究成果を生み出していきたいと考えています。
これからキャリアを作っていきたい方に送るアドバイスがありましたら、教えてください
私からのアドバイスは2点あります。
1つ目は、プレゼン能力を磨くことです。自分の考えや思いを相手に的確に伝える能力は非常に重要です。例えば、面接や企画提案の場で、自分の考えを効果的に伝えられなければ、どんなに素晴らしいアイデアも評価されません。特に医療の現場では、限られた時間の中で要点を簡潔に伝える能力が求められます。
2つ目は、人を大切にして付き合っていくことです。どんな仕事も一人だけでは完結しません。私自身、さまざまな人に助けられ、チームや共同研究を通して成果を出してきました。人とのつながりは本当に宝です。周囲の人を大切にし、良い人間関係を築くことが、キャリア形成において不可欠だと思います。